ナツイロココロログまとめ

たまにはノベルゲーまとめ

概要

公式ページはここ
ストーリーのページにおおよその世界観が書かれている。

リアルリンクプロジェクトについて

このゲームの核となっているND型恋愛シミュレーションゲーム。 製作に至るまでの経緯については綺新シナリオで説明される。
サイバースペースを使って他ユーザと交流を行うところは他のND型ゲームと共通のようで、 最終的にはログインユーザの行動をAI化して、 いわゆるノベルゲーのような感覚で楽しむことを目標としているようだ。

各シナリオの要点について

このゲームにおいて重要な点は、現実世界と仮想世界の性格や行動が異なること。 なぜ仮想世界でそのような振る舞いをするのか、について着目しながらシナリオを読むのを意識すると良い。

シナリオを読む順序について

このゲームは途中までは共通シナリオになっており、選択肢により分岐する方式になっている。 選択肢は単純に分岐先となるキャラの登場する選択肢を選び続けていればよい。 分岐はメインヒロイン4人と先生の全5シナリオ、先生のシナリオについては4人のヒロインのうち、 誰かに偏らないように選択肢を選べば分岐するようになっている。
ノベルゲームの作品によっては、特定のキャラのシナリオが全体ストーリー上重大なネタバレ等になっていることもあったりするが、 シナリオを読むべき順序については特にないため、気に入ったキャラのシナリオから読めばよい。 なお、綺新シナリオでリアルリンクプロジェクトの背景が分かる描写があるが、特に先に読んだり後に読んだりで 他キャラのシナリオの読み方に影響はないので、特に気にする必要はない。

各シナリオについての簡単なまとめ

久遠シナリオ

シナリオの概要

元々主人公に想いを寄せていた久遠は、共通シナリオの段階で主人公がAIでないことに気づいており、 逆にこの状況を利用して主人公を振り向かせようと、普段のやや強気な性格とは違った、 清楚で優しくて大人しいお姫様という、自分の願望を込めて演じている、という状況になっている。 結果二人はゲームを通じ惹かれ合い、恋人同士になるものの、久遠の父親からお見合いの話を持ちかけられ、 久遠は父親の意見を尊重し、主人公と距離を置こうとするが、主人公はそれが久遠の幸せにならないと考え久遠を説得、 久遠の父親に話を持ちかけに行く。そこで、実はその見合い話が二人を試すためのはったりであることが分かり、 久遠の父親の、久遠には自分の幸せを考えてほしい、自分のせいで母親や父親を不幸にしたと思わないでほしい、 という思いを知る。そこで、亡くなった母親と向き合うことにした久遠は、主人公と再び交際を始め、 最後には結婚をする、という流れになっている。

雑感

幼なじみキャラのキーワードともいえる、過去の思い出という点をフィーチャーしたシナリオになっている。 普段はわがままなところがあるが、実はいろいろと自分の中に抱え込んでいて…という本音と建前の対比に注目して読むと良い。 シナリオを読み進めると、実は幼いころからずっと想いを寄せていた、というような描写が見られるところが実にかわいらしくてすばらしい。 シナリオ自体はきれいにまとまっていて良いが、このゲームのテーマとも言える電脳世界と現実世界の対比があまり生かされておらず、 シナリオ後半はほとんど現実世界の話となってしまっている点があり、ストーリー自体は良いものの、作品のテーマに合っていないのが若干気になるところ。 なお、主人公がAIでないことに気づいたタイミングの詳細については、共通シナリオでは特に伏線のような形では触れられていないようだ。 (一応、レジャーパークのシーンで、過去に海岸で助けてもらったことを思い返しているような描写は見られる)

鈴シナリオ

シナリオの概要

しっかりものの妹として振舞っている鈴だが、その心の内では兄である主人公に強く想いを寄せており、 しっかりものでいなければ傍にはいられないという強迫観念のようなものを抱いている一面があり、 電脳世界での交流では遠慮なく甘えていられたことから、電脳世界に強い依存性を持つようになってしまう。 表向きには堂々と交際できないために、電脳世界の中だけでも恋人同士の関係に、と思っていたものの、 次第に現実世界でもその強い想いを抑えられなくなったため、主人公からシミュレーションを終わらせる話を持ちかけられる。 だが、シミュレーションが終わってしまうと、二度と恋人同士のような関係に戻ることができないために、 それを拒絶、その後シミュレータの影響によって心を閉ざし昏睡状態に陥ってしまう。 主人公は梅宮姉弟の協力を仰ぎ、シミュレータの技術を使って鈴の意識への干渉を行い、 ずっとしっかりものでいなければ、という強迫観念により心に傷を負い続けていたことを知る。 その想いを知り、自分の気持ちを再認識した主人公は、鈴を生涯に渡り見守り続けることを決意、 その想いを鈴へ呼びかけることにより、無事に鈴は意識を取り戻し、二人は秘密の関係を続けていくことになる、というシナリオになっている。

雑感

妹キャラのキーファクターを詰め合わせた、正に理想の妹キャラというべき丁寧な描写が光る。 小さいころの思い出とその裏でずっと抱き続けてきた想い、しっかりものでありながらも甘えたくて甘えたくて仕方がないという性格、 血のつながった兄妹であるが故の葛藤(=義理の妹ではない!)など、かくあるべきという要素はすべて押さえられている。 現実世界と電脳世界の性格の対比もとても分かりやすく、作品のテーマにもうまくマッチしており、最後の一波乱も、 鈴のかわいらしさを描写するのに一役買っており、最後まで楽しめる内容となっている。最高である。 現実世界の(検閲)シーンが3回あるが、3回とも(検閲)で終わるという一部のユーザの性癖を狙い撃ちしたような内容になっているのが、若干好みが分かれるところか(

綺新シナリオ

シナリオの概要

綺新のアバターには本音変換ツールという開発中の特殊なツールが使われており、 本人の意思を変に誇張してしまうという欠点があったため、電脳世界では変態じみた行動を繰り返す危険なキャラになっていたが、 そもそも恋愛経験自体ない綺新は、それがなければまともにシミュレーションが出来ないと考えていた。 主人公は現実世界でも試してみればよい、と綺新に提案をし、現実世界でもデートをするようになる。 本音変換ツールの調整も進み、二人は次第に惹かれ合うものの、ある日綺新は突然体調を崩してしまう。 主人公は無理をしないように言うものの、綺新はこの助言に反発し、主人公と距離を置こうとする。 そこで、このリアルリンクプロジェクトは綺新の亡くなった父親が開発をしていたゲームで、 その完成を目指すあまり、無理をしていたことを梅宮先生から聞き出す。 主人公は綺新を思って助言をしたこと、また自分も協力をすることを申し出、二人は仲直りする。 その後、ゲーム内に残っていた綺新の父親のアバターから、父親の綺新に対する思いを告げられ、 主人公のおかげで自分の本懐が満たされたことを知ったそのアバターから、 このゲームのクリア特典である結婚式イベントをプレゼントされる、という流れになっている。

雑感

本音変換ツールという設定のアクが若干強く、中盤ぐらいまでの変態じみたキャラが許容できるかで若干好みが分かれるシナリオ。 終盤は比較的まともで、電脳世界では変に強気に迫るところがあるような性格に対し、現実世界では恋愛というものに対しどうしていいかわからず 戸惑うような性格、という対比も面白い。終盤の(検閲)シーンも若干変態気味なのはご愛嬌。

小都音シナリオ

シナリオの概要

実は小都音は二重人格者であり、元々の引っ込み思案な性格に対するコンプレックスから、 その真逆の性格であるライという人格を生み出してしまっていた。 ライとはお互いの存在を認識できており、感覚も共有していて、コンパクトミラーを通じて会話が出来ていたようである。 基本的に電脳世界ではライという人格が、現実世界では小都音という人格が表に出ていることになるが、 シミュレーションを通じ主人公との仲が深まるにつれ、主人公が好きなのは小都音本人ではなくライという人格なのではないか、 という疑念が深まり、主人公に告白されるも、その疑心暗鬼から心を閉ざしてしまい、 ついには現実世界も小都音の人格がライの人格の影に隠れてしまうことになってしまう。 主人公は決してライだけが好きになったわけではない、現実世界の小都音も好きだということを告げ、 小都音の人格を呼び戻すことに成功、その後ライの人格ともうまく分かり合うことが出来た小都音は、 ライの人格と一体化し、今までよりも明るい性格になることが出来た、という流れになっている。

雑感

現実と仮想での不自然な性格の違いは、実は二重人格だったというオチになっている。 ところどころで小都音視点の描写が入り、それを示唆するような部分が何度か出てくるため、 一度読み終えた後も、そこに注目して読み返すとなかなか面白いかもしれない。 引っ込み思案な性格で戸惑っているような場面が多いが、そこがとにかくかわいらしく描写されており、 実に保護欲をかきたてられるキャラクターになっている。実に良い。 (検閲)シーンが元々の現実世界の性格が性格なだけに、そのギャップからなかなかに強烈なインパクトがあり、 特に電脳世界で両方の人格が同時に存在している状態の場面はかなり衝撃的。危険である。

香奈恵シナリオ

シナリオの概要

リアルリンクプロジェクトのシミュレーションを続けようにも、 主人公が4人の誰とも同じような反応しか示さず、継続が難しいと判断した香奈恵は、 主人公に恋愛慣れしてもらうためにさまざまな手段を講じる。 そして香奈恵自身を練習相手にシミュレーションをすることになるが、 さまざまなハプニングにより、結果として二人が惹かれあうことになる、という流れになっている。

雑感

サブキャラのためか、シナリオは短め。だが、他キャラ並みに(検閲)シーンは用意されているという謎の状況。 ほぼおまけのような感じで、ぶっちゃけ(検閲)シーンがやりたかっただけなのでは(

総評

全体的に、いわゆる意外性を持たせるような展開はあまりなく、シリアスなシーンはあるものの、 いわゆる感動系、深読み系ではなく、いかにキャラクターをかわいらしく描くかに注力したような内容になっている。 (久遠のシナリオでは若干薄いものの)2つの世界での性格の対比がキャラクターの魅力を描くことにしっかりとつなげられており、 キャラクターにどれだけ思い入れができるか、また意外性が少ない王道シナリオが合うかどうか、が楽しめるかどうかのポイントと思われる。

優先度をつけると、個人的には、性格の対比の設定がうまく生かされ、自分の妹キャラに対する理想が描かれていた鈴シナリオはぜひ読んでほしい。 小都音シナリオも作品テーマがキャラクター性そのものになっており、次いで面白く感じられた。 綺新シナリオもうまく作品テーマを生かしているが、ちょっと性格のアクが強いのでその点では前者には劣るか。 久遠シナリオは作品テーマが生きていないため若干他3キャラに対して劣るものの、シナリオ自体の出来は良く、幼なじみ属性は非常によく生かされている。